ネットの上の作りごと <かたつむり友の会>が
“えっ ホントにあったんだ!”と
誰よりも 当の本人が驚いたのが 11月4日の「堀江はるよのコンサート」でした
ご来場の皆様とご一緒に楽しんだ<堀江はるよの世界>を お出でになれなかった皆様へ
カタツムリ制作・文字放送版でお届けいたします

                            堀江はるよ



これは2010年4月発売のCD&曲集「ひらがなの手紙4の収録曲の、
初演コンサートの模様です。



ご案内

エントランス  ・開演前 

「ようこそ」  ・「たんぽぽ」「クリスマスローズ」   ・ 「訪れ」「舟」  ・「五月」「森へ」

チケットプレゼント  ・<かたつむり出版展示即売コーナー>



「ポニーテイル」  ・「子守歌」  ・ひらがなの手紙・4〜ご案内  ・「駅」「まてばしい」 

  ・「赤い毛糸」「わたしの友だち」  ・アンコール    ・ごあいさつ   ・テロップ   


 
当日の楽しいハプニングの数々は 惜しみつつ カットいたしました




堀江はるよのコンサート

2009年11月4日(水)19:00 開演
かん芸館




JR荻窪駅から7分 閑静な住宅街のつづきにある会場
らせん階段を登ると 灯りの下には…




そしてホールへ





50席のスペースに 当日のお客様は45名
残念ながらおみえになれなかった方 ネットでご覧ください


 舞台中央に プレイエルのピアノ 向かって右の隅に ゲスト席


    作曲者がお話する間 梅津さんは こちらへ



            ケイタイ アラームは お切り下さい!



   ……客席が暗くなりました  コンサートの始まりです…





      舞台左手より 堀江はるよ登場
    いつもの黒のタートルに黒のパンタロン


 〜堀江〜

こんばんわ 堀江はるよです ようこそお出でくださいました
今日 さまざまなご縁で ここに集まって下さった皆様への感謝をこめて
ごあいさつを…ピアノで…弾きます

      
      
堀江 ピアノに向かい ひとりごとのように始まったメロディーがカノンになって流れます

♪〜  「ようこそ」
     

       再び堀江のお話 本日はの進行は このスタイル
     作曲者のお話で<堀江はるよの世界>をご案内いたします








  〜堀江〜

今日は 梅津よし子さんの歌と 矢島榮子さんのヴァイオリン そして私のピアノで
「堀江はるよの十の歌」全曲と ヴァイオリン独奏曲集「スケッチブック」から2曲を聞いて頂きます

作曲家にも いろいろなタイプがありますが
私は どうも自分が楽器のような作曲家だ…という気がします
ステキな演奏に出会うと それに反応して 私という楽器が鳴り出して音楽が生まれます

梅津さんの歌う「たんぽぽ」を聞いて 「クリスマスローズ」「訪れ」…と九つの歌が出来て
「堀江はるよの十の歌」という曲集になりました
矢島さんのヴァイオリンを聞いて「ポニーテイル」が出来て、「子守歌」が出来て
そしてもっと沢山の曲を書きたくなって 「スケッチブック」という曲集にすることを思いつきました

私の曲は こうして演奏家との出会いから生まれてきました
素敵な演奏家に次々と出会えたのは、とても幸せなことだったと思います
今日この会場にも そのうちの何人かの方がお見えになっていますので ご紹介いたします

ギターの佐藤弘和さん… 笛の前澤祐子さん… リコーダーの江崎浩司さん…
これからまた この方たちの演奏で私の曲を聞いていただく機会もあるでしょう
どうぞ 楽しみにして下さい

それでは最初に「たんぽぽ」 そして「クリスマスローズ」
梅津よし子さん どうぞ!



    舞台左手より 梅津よし子さん登場
    黒のベルベットのドレスに 花のように結んだブルーとラメのスカーフ

♪〜  「たんぽぽ」 「クリスマスローズ」




      梅津さんは ゲスト席へ 
    小さなテーブルには ジノリ風のカップ




気がつかれた方は少ないと思いますが
今回 梅津さんは すべての曲を暗譜で
つまり 譜面を見ずに歌いました

うち7曲は 今年前半に作られた曲です
このように沢山の初演の作品をふくむプログラムが
まるで歌いなれた曲のように 暗譜で歌われるのは
実は かなり珍しいことです







  〜堀江〜

クリスマスローズは こんな花です 
(写真が客席に廻されます)

この花が 梅津さんの家のお庭に咲きまして これっくらい
(25cmほど)の丈なんですね…
彼女が言うんです “もう、可愛いのよぅ…こうやって地面に顔をつけて見ちゃうのよ〜”って
それを聞いて 私も一緒に地面に顔をつけてクリスマスローズを
のぞき込んでいる…つもりになりましたら
“あ、クリスマスローズって 小人のランプみたい”って思いました
そして “小人のランプ”という言葉からイメージが広がって この歌が出来ました

小さくなって クリスマスローズの下に入ってみたい…
でも、もし入ったら 二度と元へは戻れないかもしれません
ちょっと怖い歌です


「たんぽぽ」は 大学卒業と同時に故郷を離れた私の
“みんなどうしているかなぁ…”という歌です

たんぽぽは 私が一番好きな花です
強い草ですが 花は、摘むと、すぐにしおれてしまいます
花瓶に挿して楽しむことは出来ません
そこが 好きです

では「訪れ」と「舟」を…どうぞ



      梅津さん 舞台へ  
      ♪ ようこそ あなた ここへかけて… 


♪〜  「訪れ」 「舟」


      波のようなアルペジオが 次第に高くなって消えます
      プレイエルを弾く楽しみを 十二分に味わいました







  〜堀江〜

私たちは一人ひとり それぞれ自分の小さな舟に乗って生きているのだと思います
漕いでも進まなかったり 思わぬ方向へ流されたり クルクル廻ったりしながら…それでも
波や風と対話しながら ふわり…ふわりと生きてゆきたい そんなふうに私は思っています


「訪れ」については 私のホームページに載せた詩を読みましょう

         友だちを訪ねます。
         何を話すでもありません。
         それぞれの荷物は、それぞれが背負うしかなくて、
         代ってあげたくても、代れません。
         大変なの分かるよ…と言いたくても、
         自分でない身のことを、どれほど分かるでしょう。

         一緒に歩いて、
         一緒に花を見て、
         一緒に溜息をついて、
         それが、ささやかなプレゼントの交換です。

さあ 次は「五月」と「森へ」です



      鐘の音のような前奏に乗って
      走るような速い歌い出し



♪〜  「五月」 「森へ」



      弾むようなリズムのスタッカートで 曲が終わります 







  〜堀江〜

「森へ」の中の沢山の木の名前は 梅津さんに教えていただきました
彼女にとって 木は “みんな友だち”なんです

「五月」の中に出てくる “白い花”は、ニセアカシアです
たかーい木に 藤のような形の花が 房になって咲きます
とっても良い香りがします

この二つの歌の歌詞にちなんで 今日はアンケート用に ミドリのエンピツ…
昔懐かしい“緑色のトンボエンピツ”を用意いたしました
これは 皆様へのプレゼントです
受付に置きますので どうぞ記念に 一本ずつお持ち帰り下さい



プレゼントは もう一つあります
私が笛のために作りました「桃花の譜」…桃の花の曲という意味ですね
この作品が 12月13日 日曜夜に JR東神奈川駅 京急仲木戸駅隣接の
かなっくホールという所で 初演されます

演奏者の松尾慧(けい)さんから 招待券をお預かりしておりますので
ご希望の方は アンケート用紙に その旨お書き添え下さい 後日お送りいたします
ご案内を 先ほどのエンピツの横に置きますので どうぞご覧下さい


さて 次々と聞いていただきましたが ここで10分間 休憩いたします
実は今日は 会場の後ろの方に 「カタツムリ出版展示即売コーナーを作りました

エッセイや詩を添えた自筆の楽譜による曲集 私の初期の作品を集めた特別CD
おなじみ新田和繁さんのイラストのグリーティングカードなど 置いております
この収益は 私 堀江はるよの 今後の活動の資金となりますので
どうぞ宜しくお協力のほど お願い申し上げます



          ・・・・・・ここで10分間の休憩です・・・


     受付に置かれた みどりのエンピツ
     かご型の入れ物は 木彫作家・中山フクエさんの作品です

     12月13日の松尾慧さんの演奏会「風のゆくへ」」の
     招待券をご希望の方は 下記へお申し込み下さい
     先着10名様まで ご招待いたします

                              
お申し込みはこちらへ
 




 <かたつむり出版>展示即売コーナー 
                                                             
   かたつむり出版は
創業15年目を迎えました
社長以下総勢一名の労作の数々が
かたつむり友の会のアーティストの手で
美しく並べられました

                       





      堀江 登場
      コンサートの後半が始まります



  〜堀江〜

後半は 矢島榮子さんの演奏で ヴァイオリンの曲から始めます

最初に「ポニーテイル」

女の子が ブランコに乗っています
ポニーテイルの髪をなびかせて…まだ腕が細いようなローティーンの少女です
こちらに 男の子が立っています そして女の子を見ています
女の子は気がついていません 気がついても気にもかけないかもしれません
恋とも言えない…幼い…幼い恋の情景です

矢島榮子さん どうぞ!



      矢島榮子さん 登場
      今夜は梅津さんも矢島さんも 堀江に合わせて黒のドレス
      くるぶしまでのスカートに 袖のふくらんだ上着 
      細いウエストと 上着の裾のフレアが エレガントです

      プレイエルのラの音… ヴァイオリンのラ…レ…レ…ソ…ミ…

      


♪〜  「ポニーテイル」


      揺れるブランコが追憶となって 曲が終わります





  〜堀江〜

次は「子守歌」です
「ミス・ポッター」という映画をご覧になった方は おられるでしょうか
もう DVDでも見られます
ピーターラビットの作者のベアトリクス・ポッターさんの生涯を ドラマにしたもので
その中に 20世紀初めのイギリスの子ども部屋が出てきて これがとても素敵でした
その “映画の中の子ども部屋”が この曲のイメージの元になっています

ベッドがあって 窓の外には お月様
白い寝巻きを着た子どもたちは まだ眠たくありません
ゴソゴソしたり 悪戯したり…
でも お母さんのやさしい子守歌に やがて眠ってしまいます



♪〜  「子守歌」



    〜堀江〜

矢島さん ありがとうございました (矢島さん退場)

今の「子守歌」の終わりに ヴァイオリンが“Good nigh…t”と歌ったの
皆さん 気がつかれたでしょうか?


実は プログラムでもご案内しておりますように
私の4枚目のCDを 来年2月に録音
エッセイと 伴奏付きの楽譜を添えて 「ひらがなの手紙4」として 4月に発売いたします


内容は 本日演奏した曲 全曲ですが
曲順を変えて ただいまの「子守歌」を 一番最後の曲にします
CDの終わりに ヴァイオリンが“おやすみなさい”を言うんですね





「ひらがなの手紙・4」表紙イラスト

詳細
梅津さんの歌を聞いた後に
矢島さんの優しいヴァイオリンを聞きながら
そのまま 眠っていただけるCDです
どうぞ ぜひお求め下さい



さて また歌に戻りましょう  「駅」 「まてばしい」…梅津さん、どうぞ!



      梅津さん 登場
      ふんわりと肩にかけたショールは
      赤みを帯びた枯葉色 秋のイメージ

      うつむいて 顔を上げると 雰囲気は一転して暗く…
      ピアノの粗いトリルで 前奏がはじまります

      


♪〜  「駅」「まてばしい」


      明るいGの和音で 「まてばしい」が終わります 

     





  〜堀江〜

ドングリのなる木は いろいろありますが 
マテバシイは その中で 一番大きくなる種類なのだそうです

アニメの「となりのトトロ」の中に マテバシイのドングリが出てきます
バス停で トトロがサツキにお土産を渡します
後で開けてみると 中には いろんな種類のドングリが入っています
サツキがそれを写生して 下に名前を書く・・・その中の一つがマテバシイです

「駅」は ドラマを秘めた曲です
どんなドラマかは…… 皆さんがお考え下さい
私が関西に住んでいたとき 近くに幾つか、こういう駅が見られました
この歌の駅は その“幾つか”をミックスして作りました

それでは最後に「赤い毛糸」 そして「わたしの友だち」
この2曲は どうぞ私をイメージしながら お聞きください



      堀江 おどけて小さくガッツポーズ
      速い三拍子で始まった前奏が がっかりしたように どんよりした音に変わると
      妙に明るく歌が始まる

      ♪ 赤い毛糸で編んでる 長いながいマフラー…



♪〜  「赤い毛糸」 「わたしの友だち」


      随所に響く どことなく垢抜けないファンファーレ
      それが この「わたしの友だち」の 大切なモチーフです
      さあ これで全曲の演奏を終えました

      温かな拍手… 客席いっぱいの楽しそうな笑顔… 
      ワッと声の上がった愉快なハプニングについては ここでは申しません







  〜堀江〜

ありがとうございます

ここで ほんとうなら一度引っ込んで
皆様の拍手に応えて戻って アンコールになるのですが
こんなに素晴らしい拍手を頂戴しましたので
ご好意に甘えて このままアンコールに入らせていただきます
よろしいでしょうか?


      幸い反対の方は おられませんでした
      それでは…さて…と改まって
      いよいよ 取っておきのアンコールです



  〜堀江〜

宮沢賢治の童話に 「注文の多い料理店」というのがあります
ご存知の方が多いかと思いますが “えーと どんなんだっけ…?”という方のために
NHKの名曲アルバム風にダイジェストいたしましたので お聞き下さい


      堀江 書いたものを取り出して読む


    わかい紳士が二人 山おくで迷子になりました
    歩きつかれて おなかがすいて ふと見ると立派な家がありまして
    「西洋料理店・山猫軒」と 札が出ています
    ちょうどいい…と中へ入りますと長い廊下
    扉があって 文字が書かれています
    「当軒は注文の多い料理店ですから どうかそこは ごしょうちください」

    ほう…はやってるんだ…お客が沢山で注文が多い
    仕度が手間取るけれど ごめんください…と こういうことだろ
    ま いいじゃないか・・・と奥へ進みますと また扉があります

    帽子 外套 靴を お取り下さい… メガネや とがったものを お取り下さい…
    クリームを塗って下さい…  塩を 揉みこんで下さい…???

    アレっと思って次の扉を見ますと また文字がありまして
    「大へん けっこうに できました さあ おなかに おはいりください」
    そして声が 聞こえてきます

    “早くいらっしゃい 親方が もうナイフを持って
     舌なめずりして お客様がたを待っていられます”



      堀江 山猫よろしく しゃがれた声でセリフを言って 
         客席に向かってニッコリ…



「注文の多い料理店」は 「お客様が食べられてしまう料理店」だったんですねぇ

ところで本日のコンサートも、「注文の多いコンサート」でありまして、
アンコールは 「お客様がた」に歌って頂きます

曲は先ほどの「まてばしい」
お手元のプログラムに 譜面がありますので、どうぞお開き下さい
歌唱指導は梅津よし子さんにお願いいたします!!


      そうなんです プログラムには 「まてばしい」の楽譜が載っておりまして
      それが何故なのか 「お客様がた」は ここで初めて理解されました

      最初に 矢島さんのヴァイオリンと堀江のピアノで 聞いていただいて
      でも もう途中から 小声で一緒に歌いだされる方もおられて
      梅津さんのリードで “さあ ご一緒に…” となった時には 
      初めてとは思えない歌声が聞こえてきました

      作曲者にとって至福のひととき 皆様ありがとうございました

      つづいて…


  〜堀江〜

素敵な歌声を ありがとうございました 
お上手でビックリしました

御礼に 最後に私がもう一度 ピアノを演奏させていただきます
「ひらがなの手紙・3」に収録いたしましたピアノ曲「遊ぼうよ!」から
第ニ楽章「カリヨン」 鐘の響きを表した曲です。

この「CD3」で 私は初めて 自分でピアノを弾いて録音をしました
今日は そのときに使った楽譜を持ってまいりました
この想い出の楽譜で 演奏いたします



      ピアノ独奏のために プレイエルの蓋が 大きく開かれます



♪〜  「遊ぼうよ!」より  第二楽章 「カリヨン」



      堀江にとって ピアノは幼馴染み  ピアノの音は 堀江の母国語です



  〜堀江〜

ありがとうございました…!


      堀江 本日の演奏者のお二人を舞台へ

矢島さん ありがとうございました  
梅津さん ありがとうございました

それから… こんなものを用意いたしました (籠を差し出す)
「森へ」の中に出てきましたミントのキャンディーです



後ろのほうの椅子を少し寄せて場所を作りますので
どうぞ皆様 これをあがって 一休みしてからお帰り下さい。
私も ご一緒に寛がせていただきます

本日は ありがとうございました


      堀江 キャンディーの籠を持って客席へ




・・・・・・客席にライトがつきました・・・


ネットに描いた作りごとのはずの<かたつむり友の会>が
ほんとうにあった…夢のように幸せな夜でした

堀江はるよのコンサート・文字放送版へのご来場 ありがとうございました
どうぞ ミントのキャンディーを お一つお取りください








<堀江はるよのコンサート・文字放送版>

写真:西巻尚樹
協力:CD「ひらがなの手紙・4」を応援する会
制作:かたつむり出版

CD+エッセイ+楽譜の「ひらがなの手紙・4〜堀江はるよのコンサート」
A4版56頁 税込み価格3000円


好評発売中です

  

詳細は、こちらでご覧下さい。

 関連エッセイ「御礼」「今年そして来年三月のお手紙

ご案内へ戻る           
 
カタツムリの独り言へ戻る