石原功さんの楽譜



1991年から1993年にかけて、私の曲が月刊・現代ギターに巻末楽譜として
掲載されました。その時に、印刷のための版下を作って下さったのが、楽譜浄書の
石原功さんです。

当時はパソコンが無くて、浄書は手作業でした。
紙の左右に5本の針で印をつけ、それを結ぶようにガラスの「烏口(からすぐち)」
という道具で、一本ずつ線を引いて五線を作り、その上にツゲに彫って作った音符や
記号のハンコを押して、楽譜を作ります。

浄書屋という呼名から「技だけの人」をイメージしていた私は、石原さんの楽譜への
深い理解と、豊かな感性を感じさせるお話ぶりに、びっくりしました。

石原さんの楽譜は、読みやすく美しく、 “いつか石原さんの浄書で曲集を出したい”と
いうのが、私の夢になりました。けれど個人が曲集を出版するのは容易でありません。
長い年月を経て、やっと夢を叶えることが出来ました。作曲者の意図が誤りなく表現
されるように、楽譜表記について何度となく相談に乗って下さった石原さんに、
深く感謝しています。

音楽を人に伝えるものという意味で、
梅津よし子さんの歌、矢島榮子さんのヴァイオリンと同じく、
石原さんの楽譜も、作曲家の私にとって、一つの大切な「演奏」です。

            CDとエッセイと楽譜「ひらがなの手紙4」より

                      2010年4月 堀江はるよ
 
 
 
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