■江崎浩司/ヤコブ・ファン・エイク/≪笛の楽園≫
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第3集 レビュウ
     
 
 

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  [録音評] レコード芸術2018年9月号より

●はっきりくっきりしたサウンドは、強いインパクト
 を残した「空飛ぶ笛」を思わせ、演奏に近く座して
 聴く趣の録音だが、ここでは長めの残響が取り込ま
 れてナチュ ラリティのある佇まいが魅力満点。
 持ち替えられる笛の違いも十全である。
 眼前の演奏を聴くイメージでありながら、音像にほど
 よい膨らみのあるリアリティを感じ させる仕上がり
 になっている。
                (神崎一雄)


  ブックレットより(抜粋)

たった1本の笛で描かれる戦争。アルバムのちょうど真ん中におかれた「闘い」は、えらく愉しい
聴き物だ。アーティキュレーションの処理やタンギングの使い分け、さらには寄せては返すような
フレーズのうめりなど、奏法上の工夫が細部まで凝らされた演奏を、遠近感やエコーの効果を生か
したエンジニアリbbグが支える……などと訳知り顔の説明を施すのが虚しく思えるほど、音楽が
描写する事象に対して、本当に必要な要素だけをシンプルに凝縮したファン・エイクの譜面から、
実にファンタジーの豊かな音響体が立ち上がる。

そして特に今回のアルバムは、ファン・エイクが施した曲の配列法も手伝って、まるで背後に秘め
られたメッセージを持つ音楽が内的な流れの必然性と共に耳に迫るような思いすら抱かせる。

ファン・エイクが即興で奏でていた楽の音が、同時代の聴き手にとって心の慰みとなり、安息の場と
なった。そしてそこには人生にとって非常に大事な意味を持つ、痛切な何かを呼び起こすものが封じ
込められていたから、広く大衆的な人気を博するに至った。その”何か”に呼応する笛を、江崎さんは
ここで吹いているのだと言い換えてもよい。アルバムを手にした各人が思い思いに大事なストーリー
を託しながら耳を傾けたくなるような、約70分の音楽の中で。

                                       (木幡一誠)

 
 
     
 ~レコード芸術 2018年9月号 【新譜月譜  音楽史】より~

  特選盤  推薦     美山良夫 
 
 150曲にのぼる《笛の楽園》全曲録音。このチャレンジングな企ての第3集が登場した。
知名度の高い曲を含んでいた第2集から半年、楽譜の曲順に従った演奏・録音とはいえ、今回の内容も
また多彩である。

スペイン支配から脱するために尽力し暗殺されたウィレムⅠ世にちなむ〈ナッサウ家のウィルヘルムス〉、
〈軍神マルスのクーラント〉、そして〈夜は何をしましょうか?〉といった親しまれた旋律による変奏
の愉悦。むろんそこは相当のテクニックを披瀝する場でもある。

 その愛国歌《ウィルヘルムス》は、戦いの情景を音に昇華し、それを笛一本に託した〈戦い〉にも
登場する。これはリコーダー(ルネサンス・アルト)で描かれる6分に近い豊かな変化をもった音絵巻だ。
同じ笛で、直前に「詩編第118編《恵み深い主に感謝せよ》」(1644年版)の演奏を組み込むのは、
プログラム作りの妙であろう。第3集も多種のリコーダー等が、曲想に応じて使い分けられる。
今回もまた、どの楽器も自家薬籠中といった演奏ぶりに感嘆させられる。

 リコーダー愛好家には馴染み深い曲集とはいっても、笛1本のための楽譜そのものはいたって簡素。
そこからこの確信をもった演奏までの艱難辛苦は並大抵ではないはずだが、このディスクから聞こえて
くるのは、その先にある輝かしい音楽的なひろがり、多彩さを伝えるしもべであるかのような演奏者の
熱い思い、そして何より音楽の豊穣である。
 


  特選盤  推薦     矢澤孝樹 
 
 私たちは、歴史的壮挙の進展に現在形で立ち会っている。 このたび、第3集が発売された、
江崎浩司のエイクの《笛の楽園》全曲録音である〈最後的には全8~9集程度になるか〉。

 当全集の価値は「日本人奏者が優れた演奏で《笛の楽園》を演奏」というだけにとどまらない。奏者に
よる詳細な各曲の解説は、ルネサンス期から同時代まで、聖俗問わず欧州諸国で親しまれたレパートリーが
集結した「17世紀音楽の百科事典」としての当曲集の性格を明らかにする。また、この第3集には23曲が
収録されているが、使用楽器はルネサンスおよびバロック・タイプの各種リコーダーはじめ12種に及ぶ。
各曲にふさわしい楽器が選ばれているからだが、その結果「主題と変奏による無伴奏作品」というシンプル
な形式に音色的多様性が加わるのみならず、各曲の背後に広がる広大な背景も実感されてくる。

 演奏がそれに説得力を与えていることは言うまでもない。トラック8⃣あたりから、ガナッシ・ソプラノを
小気味よく活躍させたと思いきやバンブー・リコーダーの素朴な音色、ショームの野性的な響きを愉しませ、
アルト・リコーダーで詩篇を滑らかに変奏し、〈戦い〉になだれこむあたりの流れ。移動しながら演奏する
音響的実験も取り混ぜながらあらゆるアーティキュレーションや音色の変化を駆使して展開する〈戦い〉は
今回の白眉だ。解説も続き読物になっており、今後の続編を引き続き期待して待ちたい。
 


~レコード芸術 2018年9月号 【
New Disc Collection 】より~

   優秀録音  エイク/《笛の楽園》第3集 江崎浩司    神崎一雄 
 
 今回は復刻版を除くと録音という切り口からみて試聴数のわりには、ある水準にあると感じさせるもの
が多かった。試聴対象のほぼ半数と言ってよいが、印象に残ったのは3点。江崎浩司の《笛の楽園》、徳永
真一郎の『テリュール』、そして宮本笑里の『classique』である。『テリュール』は整った音が実に快い。
半面、”整い”の枠を破るのびやかさがほしいと感じさせるところもなくはない。『classsique]』はオーディ
オ・マニア好みの鮮やかさが、いささか気になるところか。

 それらに対して《笛の楽園》は、以前にこの奏者の『空飛ぶ笛』というアルバムと、そこでの冴え冴えと
した彩り鮮やかな ”笛” の鮮やかさとを思い浮かばせるが、このCDでは長めの残響を伴い、それによって
”冴え” いっぽうではなく自然空間での演奏のリアリティを得ているのがいっそうの魅力となっている。
こなれているとも言えようか。 今回のベストである。
 


~音楽之友 2018年9月号 【 DESC Selection  News Infomation 】より~


  今月の注目盤            真嶋雄大  
 
 今月の最後は、江崎浩司のリコーダー・ソロによるヤクブ・ファン・エイク「《笛の楽園》第3集」
ファン・エイクは17世紀のオランダで活躍したリコーダーの巨匠で作曲家。生来盲目で、聖ヨハネ教会
の隣りの公園でリコーダーを演奏していた作品が採譜され、150曲にも及ぶ流行り歌や舞曲、詩篇歌の
旋律に基づく変奏曲を集めて『虹の楽園』として出版された。猛暑の中、一服の清涼剤になるに違いない。



 
 
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H.H.

 
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