■江崎浩司/ヤコブ・ファン・エイク/≪笛の楽園≫  
  …… レビュウを集めて ……   
   レビュウ集トップへ     
   
 
    第4集 レビュウ     
 


 
 
ディスク詳細・フォンテック
 RECORD GEIJUTSU 特選盤

 

  [録音評] レコード芸術2019年4月号より
 
●楽器はいろいろ変わるが全曲リコーダー・ソロで
 他の楽器は入らない。リコーダーは残響によって定位が
 不安定になりやすい楽器であるが、適度な残響を取り込
 みながら巧みな処理で安定した定位を維持している。
 基本的に低域がない楽器なので楽器の直接音の周波数
 レンジは狭いが、環境成分まで含めるとやはり帯域の
 広いスピーカーのほうが実在感が出るようだ。
 
              (峰尾昌男

  ブックレットより(抜粋)

教会の中庭で縦横無尽に奏でられ、人々の耳を楽しませていたリコーダーの調べ。それが「笛の楽園」
として後世に伝わった。 かのチャーリー・パーカーが残したソロを五線譜に書き起こしたアドリブ・
ブックの17世紀版などと形容したら大げさだろうか。

ちなみにジャズメンのアドリブにまま見られる”手癖”の類は彼の場合にもあてはまるらしい。
ファン・エイクのお好みのパターンと思える音の並びに、「またこう来たか?」と、別々の曲の中で
出会うことも多いとは江崎さんの弁。しかしそれが「必ずしも吹きやすくなかったりするんですよ!」
というから、面白いものです。

ファン・エイクが笛を手にしながら生み出した、高度な技巧性の表出ばかりでなく、変容を重ねていく
モチーフが醸し出すイマジネーションの豊かさが耳に残るヴァリエーションの数々。江崎さんのような
プレーヤーにかかると、それは時間軸的に水平な流れをおりなすだけでなく、一連の変奏が前の変奏に
積み重なり、いわば上塗りをする形でひとつの構造物を形成していくような思いにもかられる。そこに
介在するのは即興的でありながらも理路整然とした創造の営みだ。

1本の笛を絵筆のごとく操りながら、演奏の背景をなす無音の部分にまで、17世紀オランダ絵画の黄金期
を飾った名品にも通じる光と影のグラデーションを感じさせる……。そんなパフォーマンスが、たとえば
「ダフネ」ならダフネの物語をキャンバスの上に定着させていく。素晴らしい成果だと思う。

                                       (木幡一誠)

  
 
 

~レコード芸術 2019年4月号 【新譜月譜  音楽史】より~

  特選盤  推薦     美山良夫 
 
  着実な歩みをつづけるヤコブ・ヴァン・エイクの《笛の楽園》全曲録音。
 第3集までの素晴らしい演奏を想起しつつ比較をしても、この第4集は一段と輝かしいディスクになって
 いるようである。それは、冒頭にその順番が巡ってきた〈涙のパヴァーヌ〉の、難度の高いテクニックを
 要求するディミニューションや、3トラック目に現れる〈美しき娘ダフネ〉の、1本の笛からここまで
 できるのかと感嘆するしかない圧倒的な音楽的展開に起因している。
 リコーダー・ファンにとってはたいへん馴染み深い作品であり、かつては野獣的技巧あるいは楽天的音楽
 づくりで演奏されてはきたが、江崎浩司による演奏はそれらとはまったく異なり、技巧と華麗さのなかに
 音楽が貫流し、瑞々しい感性が細部にまでしみこんでいる。

 カッチーニの有名なモノディー歌曲による〈アマリリうるわし〉は再登場の曲であるが、ここでは音域の
 低さも手伝って、落ち着いた、内省的とも言える表情をもった変奏になっている。10分を超える演奏を、
 音楽的持続を弛緩なく保つ力量にも感服させられた。

 また、いままでのディスクについても指摘してきたが、スコットランド由来の曲にはそのイメージに近い
 音の笛を使うなど、曲ごとにその個性を際立たせる楽器の選択も見事である。作品の背景や由来に関する
 蘊蓄や想像力ある仮説もまた《笛の楽園》への関心を広げ、江崎浩司のディスクを手にするときの楽しみ
 である。
  
 
  特選盤  推薦     矢澤孝樹 
 
 16,19,23,12。 現在、第4集まで到達した江崎浩司の歴史的プロジェクト、
 エイクの《笛の楽園》全集録音の各巻収録曲数である。

 つまり第4集は曲数が少ない。それだけ長大な変奏曲が多い。この全集録音はオリジナルの番号順収録だが、
 〈涙のパヴァーヌ〉〈美しき娘ダフネ〉〈アマリリうるわし〉は既出曲の別ヴァージョンで、3曲の演奏時間
 はそれぞれ約15分(!)、9分、10分半。 無伴奏曲として驚くべき長さで、J.S.バッハの無伴奏曲ですら
 匹敵するのは〈チャッコーナ〉くらい。ジョン・コルトレーンが《マイ・フェイヴァリット・シングズ》や
 《インプレッションズ》を繰り返し演奏しては長大化してゆくのを思わせる。〈カリヨン〉が何種類もある
 のも最近出たコルトレーン『ザ・ロスト・アルバム』の大量の別テイクを連想させる。

 今回も9種類の笛が登場、〈スコットランドの歌〉のバンブー・フルートなど楽しいが、そのようなわけで
 変奏自体に耳が行く。〈涙のパヴァーヌ〉〈ダフネ〉の後半など息を呑むばかりの超絶技巧。
 解説の木幡一誠氏がチャーリー・パーカーを引き合いに出しつつ、コード・チェンジ基本のビ・バップとの
 本質的違いに注意を喚起されているのは至言だが、先程から言及しているコルトレーンのモード(旋法)・
 ジャズ的プレイ、たとえば《I want to talk about you》の驚異的な無伴奏ソロなどとの時空を超えた響き
 あいを感じずにはいられない。当全集企画、今回も絶好調。

 
 
   これまでの曲集のレビュウを見る    
 
   Vol.1のレビュウを見る  


ディスク詳細・フォンテック
FOCD9740 2800+
 RECORD GEIJUTSU 特選盤

 使用楽器
リコーダー

 ガナッシ・ソプラノ バロック・ソプラノ ルネサンス・ソプラノ
 初期バロック・アルト ルネッサンス・アルト バロック・テナー
 ヴォイス・フルート バス 
その他
 ソプラノ・ショーム アルト・ショーム ドゥルツィアン 
 
   
   Vol.2のレビュウを見る  


ディスク詳細・フォンテック
FOCD9767 2800+
 RECORD GEIJUTSU 特選盤

 使用楽器
リコーダー

 ガナッシ・ソプラノ バロック・ソプラノ ルネサンス・ソプラノ
 初期バロック・アルト ルネサンス・アルト バロック・テナー
 ヴォイスフルート バス バンブーリコーダーA管
その他
 ソプラノ・ショーム アルト・ショーム
 
 
   
   Vol.3のレビュウを見る    
 
 
ディスク詳細・フォンテック
FOCD9784 2800+
 RECORD GEIJUTSU 特選盤

 使用楽器
リコーダー
 ルネサンス・ソプラニーノ ガナッシ・ソプラノ バロック・ソプラノ
 ルネサンス・ソプラノ 初期バロック・アルト ルネサンス・アルト
 バロック・テナー ヴォイスフルート  バス バンブーリコーダーD管
その他
 ソプラノ・ショーム アルト・ショーム
 

   
  Vol.4のレビュウを見る    

 ディスク詳細・フォンテック
FOCD9802 2800+
 RECORD GEIJUTSU 特選盤

使用楽器
リコーダー
 ハカ・ソプラノ ガナッシ・ソプラノ バロック・ソプラノ
 初期バロック・アルト ルサンス・アルト バロック・テナー
 バンブーリコーダーA管
その他
 アルト・ショーム 
 

   
 Vol.5のレビュウを見る  
 

ディスク詳細・フォンテック
FOCD9802 2800+
 RECORD GEIJUTSU 特選盤
 
 使用楽器
リコーダー

 ガナッシ・ソプラノ バス ハカ・ソプラノ ヴォイス・フルート
 初期バロック・アルト バロック・ソプラニーノ バロック・テナー
 ルネサンス・アルト バロック・ソプラノ
 ハカ・アルト ガナッシ・アルト
その他
 アルト・ショーム ソプラノ・ショーム ドルツィアン 
 
   
  Vol.6のレビュウを見る  
 
  

 ディスク詳細・フォンテック
 FOCD9833 2800+
 RECORD GEIJUTSU 特選盤
  
 使用楽器
リコーダー

 ガナッシ・ソプラノ ルネサンス・アルト ルネサンス・ソプラニーノ
 ハカ・ソプラノ ヴォイス・フルート バロック・アルト
 バロック・テナー 
その他
 ソプラノ・ショーム アルト・ショーム
 
   
  Vol.7のレビュウを見る    
 
  

ディスク詳細・フォンテック
FOCD9864 2800+
 RECORD GEIJUTSU 特選盤
   
 使用楽器
リコーダー
 ルネサンス・ソプラニーノ ルネサンス・ソプラノ ガナッシ・ソプラノ
 ハカ・ソプラノ バロック・ソプラノ ルネサンス・アルト
 ヴォイスフルート

その他
 ソプラノ・ショーム アルト・ショーム

     
  Vol.8のレビュウを見る    
 
  

ディスク詳細・フォンテック
FOCD9866 2800+
 RECORD GEIJUTSU 特選盤
   
 使用楽器
リコーダー
 ルネサンス・ソプラニーノ ルネサンス・ソプラノ ガナッシ・ソプラノ
 ハカ・ソプラノ バロック・ソプラノ ルネサンス・アルト
 バロック・テナー バス バンブーリコーダーA管

その他
 アルト・ショーム 西アジアの笛 ゲムス・ホルン



 
 


  江崎浩司 ディスコグラフィ
 

  
                             江崎浩司さんの笛
                               
H.H.

 
Topへ