〜堀江はるよの音楽・作曲その周辺〜

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最新の出版情報


1994年

♪ 小曲集「ポケットの中から」



きっかけ


ひとりごと

プレリュード

ワルツ

エチュード





堀江はるよのコンサート
文字放送版



  1994年
きっかけ




































 1994年は、「小さなゆめ」「明日へ」などの小曲に続いて、ギタリストの
 松本吉夫さんのために、「ポケットの中から」という小曲集を書いた。

 それには、ちょっとした切っかけがある。CD「ひらがなの手紙・�T」の
 リニューアル版のジャケットに、その話を書いた。
 ここにコピーしてご覧に入れたい。

 初版のジャケットには、松本さんとの対談を載せた。
 それはまた、他の機会にお目にかけるとして、今回は「堀江はるよギター曲集・�W」の
 出版のとき、この15曲の一つ一つに添えた解説を、説明を交えてお読みいただこう。

  
   

「ポケットの中から」

つぎつぎと飛び出す十五の小さな贈り物。

あるとき、私はギタリストの松本さんと、京都の奥までコンサートを聴きに行った。
バタバタと家事をすませ、フウフウ言いながら約束の大阪駅に駆けつけた私が、
やっと列車に乗り込むと、松本さんは何やらゴソゴソやっている。
一瞬の後に“ハイ…おやつ”。出てきたのは小さなお饅頭だった。
疲れて六十才位の気分になっていた私は、いっぺんに六才の子供になって、
嬉しくも有り難く“おやつ”をパクついた。

たくさんのギタリストさんを知っているけれど、
ポケットからオヤツを出してくれたギタリストさんは、松本さんが初めてだ。
このお菓子のように、ポケットの中から何気なく取り出されて、聴く人の気持ちを、
フッと和ませる曲を書いてみたい……と思ったのが、
この小曲集を作曲したきっかけだった。

ギターの音に乗って、心の漂うままに遊び、楽しんでいただけたらと思う。

                      (小曲集「ポケットの中から」解説より)



ひとりごと

ギター

独奏曲

1分42秒


1994年



















   

リズムの面から言えば、この曲は「口語による詩」のような曲です。

一定のサイクルとしての拍子は無いけれど、話し言葉のように、絶えず変化しながら
前へ進んで行く「サイクルのようなもの」があります。

たとえば出だしの2小節は、“そーぉね、そーぉなのー?”というような感じ。
この言葉は曲想とは何の関係もありません。ただ、このフレーズのサイクルを
分かっていただくのに都合のよい言葉を探してみただけなのですが。

こんなふうに歌詞をつけてみると、この曲は弾きやすくなるかもしれません。

                                      (小曲集「ポケットの中から」解説より)



  ★ この解説は、曲集の巻末に「楽屋のおしゃべり」と題して書かれている。
    形は演奏の手引きになっているけれど、実は、この演奏の手引きという形も、
    「音楽論」等と難しいことを言わないための方便で、私が書きたかったのは、
    音楽というものについての私の考えだった。

    これら15の曲について私が書いたことは、私の全ての音楽に共通する。
    2007年3月にリリースしたCD「ひらがなの手紙・3」に収録されている
    ピアノ曲「遊ぼうよ!〜音楽する心への提案」を聴いて下さると、そのことが
    いっそう良くご理解頂けるだろう。


    ひとりごとは自分との対話。
    私は、ひとりごとのように楽器を弾く。

    演奏家でないからかしら。



プレリュード               

   

よく響かせて。消音については、ご自由に。

自由にということは、何をしても良いということでは決してなく、
あなたが一番きれいだと思うやり方で弾いて下さい…ということです。

点のついたところに色をぬるとゾウさんが見えてくる「ぬりえパズル」のように、
この8分音符の行列の中には、「ちょっと目立たせると、きれいな線が見えてくる音」
が、隠されています。「ぬりえパズル」と違うのは、いろんな可能性があること。

ゾウさんを出すこともできるし、キリンさんを出すこともできる。
あなたのお好みで、ご自由にどうぞ。
                       (小曲集「ポケットの中から」解説より)



  ★ 消音=鳴っているギターの弦の振動を止めること。

    止めなければ、弦は自然に止まるまで振動しつづける。つまり、
    消音をしないまま、次々と別の弦を鳴らしてゆくと、ピアノでいえば
    ペダルを踏みっぱなしでて弾いているような状態になる。

    そのようにして、いくつかの音が重なって聞こえたとき、
    それが美しいか美しくないかは、状況によって違う。
    だから消音には、弾く人の細やかな判断が求められる。


    ご自由にどうぞ…というのは、ちょっと意地悪かしら。
    いやそうではなく、私は弾く人のセンスを信じたいのです。
    失敗したら、やりなおせば良い。音楽で死ぬ人はいないのだから。



ワルツ

   

「ワルツ」という題がついている時、二つの場合が考えられます。
まず単にワルツであることを示しているとき、もう一つはワルツという題を
つけることに何らかの意味を持たせているとき。

この曲には、「ワルツの決まり文句」のようなフレーズが出てきます。
あちこちに、何度も、真面目に書いた曲としては度が過ぎる…と言いたいほどに。

でも、ちょっと待って下さい。“能のない作曲家だ”と決めつける前に
“もしかしたら…”と考えてみませんか? 
あなたは今、真面目にこの曲を弾こうとしているのだけれど、
もしかしたら作曲者は、あなたと遊びたいのかもしれません。

   “ワルツって こんなふうじゃない?
      ほら こんなふうに始まって…こんなとこがあって…
        ここで派手な音が こんなふうに入って!”

遊ぶのは嫌いですか?
                      (小曲集「ポケットの中から」解説より)



  ★ しばらく真面目に作曲をしていると、無性に遊びたくなる。
    なぁんちゃって!…みたいなことがしたくなる。
    そうすると、こういう曲が出来る。
    脳がバランスをとっているのかもしれない。


エチュード

   

16分音符の符尾のつながり方を見てください。
普通は4個とか6個とかずつ繋がっていることが多い16分音符が、
3個+4個、2個+5個、3個+5個なんて、変な繋がり方をしています。

ちょっと数えるのを止めて、ただ読んでみましょう。
♪ それみ・それみし,れど・れどしそれ,しそれ・そどしそふぁ…
ね、何か言ってる…ドレミ語のオシャベリみたいに見えてきませんか?

楽譜は様々な約束ごとによって書かれています。
けれど、今まで無かったような音楽を書きたくなると、今までの約束ごとでは
間に合わない、どう書いたら良いのかわからない、という場合が出てきます。
そういう時、作曲家は「そう読みたくなるような書き方」を探します。

この16音符の符尾の書き方は、今ではもう特に新しくはありませんが、
そういうふうにして考え出された、少し前の時代の新発明の一つです。

これに弧線…スラーを付ける書き方もあります。そうすると一息に滑らかに弾いて
ほしいのかな…という感じに見えます。でも私は、そういうふうには弾いてほしく
ありません。「ベラベラしゃべる人の口から続けざまに流れ出す言葉の列」みたいな
音を書き表したいと思ったのです。♪ それみ・それみて,でも・なによそれ…

いかがでしょう?
あなたの目に、そんな感じに見えてくれると嬉しいのですが!


真面目腐って同じ調子でしゃべっては、セリフがが生きてきません。場所によって、
いろんなタッチ、いろんな音色、いろんな消音のタイミングを使ってみて下さい。
このエチュードを面白くするのは、あなたです。

       (小曲集「ポケットの中から」解説より…今回は分かりやすく書き換えました)




  ★ 「ことば」で話すのが「おはなし」、「おと」で話すのが「おんがく」
    「からだ」で話すのが「ダンス」、だまっているのが「空想」
     …というのが、物心ついてこのかたの私の感じです。


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